ベーシックインカムについて
井上智洋の「AI時代の新・ベーシックインカム論」の書評です。
同氏は、ベーシックインカムについては、原田泰氏の案をベースに論を展開しています。
1人月7万円で総額約100兆円というこで、財源として国民基礎年金、こども手当、雇用安定関連等の20兆円をはじめ、無駄な公共事業や生活保護、中小企業支援関連を削減で35兆円の財源をねん出するところまでは同じです。
所得税増税の方向についても同じですが、残り65兆円をねん出しようとすれば約25%の増税が必要となります。よって最高税率は70%となり、やや高すぎるとしています。
そこで、所得税増税を15%に抑制し(最高税率60%)、相続税を30%増税(最高税率85%)するとしています。相続財産は年間80兆円であり、30%増税すれば約24兆円の財源となります。これは所得税の10%に相当する規模です。富裕層の子は相続財産に85%課税されても、残り15%で十分生きていけるとしています。
中央銀行システムは限界
中世までは王が通貨を発行するシステムで、発行されるのは金属通貨、紙幣通貨でした。
近代から現代では中央銀行が通貨を発行するシステムであり、金本位制度、管理通貨制度があります。現在は管理通貨制度が大半です。
この管理通貨制度の下では、中央銀行を頂点とした信用創造システムであり、実質的に流通するマネーを作り出すのは民間銀行であり、通貨発行差益は中央銀行の国債買取を通じて間接的に国に還元されます。
しかし同システムの下では、バブルと不況が交互に到来し、そのたびに貧富の格差が拡大すことになります。
また富裕層や大企業は、内部留保を高め、マネーが偏在して退蔵されることとなります。
よって根本的な解決が必要となります。筆者が提案するのは、従来の金融システムを変更し、中央銀行から直接国民にマネーを供給するという仕組みです。これはその時のインフレ率、経済成長率を考慮し、前項での税収によるベーシックシンカム(金額が固定のため固定BIと呼ぶ)と区別して、金額が変動するため変動BIと呼んでいます。
AI時代で失業者が9割に
仕事は大きく分けて、肉体労働、事務労働、頭脳労働に分けられます。そのうち、AIによって代替されやすいのは、事務労働です。肉体労働は、抽象的な概念のほかに、現場でのオペレーションが必要なため、AIは2元的な対応を求められ、代替はかなり先になりそうです。
筆者は当面代替されにくい仕事として、C(creativity),M(management),H(hospitality)の3つを挙げています。Cは芸術家等、Mは経営者等、Hは介護士、保育士、看護師等です。現在このカテゴリーに属する従業者は1950万人(全体は6600万人)ですが、とはいえAIによる補助はあるため、そのうちの半数は失業する可能性があるとしています。
そうすると、全体の約9割の人には職がないということになります。
そうなると、ベーシックインカムがなければ、今よりもさらに格差が拡大したディストピアとなりかねません。
逆にベーシックインカムがあれば、消費が促され、AIはさらに進展し、ユートピアとなるかもしれません。
労働は義務?
日本国憲法では、労働は義務とされいます。しかし、古代ギリシアでは奴隷のものでした。
また中世ヨーロッパでは、モンゴルから持ち込まれた大砲が戦術上重要となり、それまでの勇敢な兵士ではなく、資金と科学技術が戦略上で重要となりました。よって重商主義となり、国民に労働を強いることとなったのです。言わば労働は他国を蹂躙するための道具だったのです。
マルクスも、労働者は必要労働時間である6時間を超えて、9時間労働することで、その超過労働時間を資本家に搾取されているとしています。
また必要労時間6時間でも人間的な生き方が奪われているとも考えられます。
よって労働は義務でも美徳でもなく、労働を生存は切り離されるべきなのです。一方で労働と所得は連動する。
感想
筆者を論を読んで怖いほど納得してしましました。
もうベーシックインカムを導入するしかないのではないかとまで思えてきます。
しかし、相続税85%というのは気になりますね。子供に苦労はさせたくないというのが親心ですからね。
対応は考えなくてはならないですね。
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There is a will, there is a way!
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